猫の手 お貸しします

関東地方にある国立研究開発法人の病院では、数年前から知的障害者の雇用をスタートし、雇用数も徐々に増やしてきました。スタッフの作業能力は年々向上し、作業スピードも上昇していくため、それに応じて業務量も増やしていくことが課題となります。この病院では、看護部門の協力で開拓した業務が仕事の中核を占めていますが、当初は一部の病棟から発注を受けていた業務も、作業の成果を見て新たに発注してくれる病棟が増えていくことで、業務量も自然と増やしていくことができました。

しかしながら、新たに雇用されるスタッフも増えてくる中で、従来の業務だけでは仕事量が不足する状況となり、院内から新たな業務を切り出すことが必要になってきました。

こうした状況を踏まえ、院内からの新たな業務の切り出しを検討してもらう目的で、「猫の手お貸します」というチラシを作成し、院内各部門に配布しました。チラシには、障害のあるスタッフが院内で現在行っている仕事の内容を紹介した上で、このように書かれています。

「もし上記のような『単純作業なんだけど時間がかかる』『難しくはないけどちょっと手間』といった『猫の手があったら借りたい』仕事がありましたら、ぜひ私たちにお任せください。丁寧・確実に仕上げてお届けします。他にも、『これもやってもらえないかな?』というお仕事がありましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。」

チラシの裏面には、「医療機関の障害者雇用ネットワーク」のホームページに掲載された切出し業務の具体例を参考に、「医療機関における知的障害者の業務従事例」を記載し、院内の部門ごとに具体的な業務内容を分かりやすく例示しています。リストの中で既に自院で障害のあるスタッフが従事している業務を明記することで、より現実的なイメージを持てるようにし、リストに沿って新たな業務拡大を検討できるように配慮しました。

このチラシの効果もあって、新たに放射線診断部門より造影剤を箱から出してシリンジとセットする作業が発注され、また、検査部門からは治験検査薬の廃棄資材の分別作業を発注されたそうです。数年にわたる実践がある中でも、こうした業務開拓の働きかけを積極的に行うことの大切さについて、改めて感じさせられます。